上黒川花祭り2017(その1)

愛知県豊根村上黒川地区で開催されている「花祭り」に行って来ました。
奥三河の山間集落に700年以上に渡って受け継がれているお祭り。

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「テホヘー」「トホヘー」と独得の掛け声に合わせて、一昼夜をかけて人が舞い、鬼が舞い、神々がそれを愉しみます。

「花祭り」のことは何年も前から知っており、行きたいと思っていたのですが奥三河は愛知県でも静岡県に近い山奥の地。
実際は1月開催だけではないのですが、車に雪対策をしていない自分には行くのにハードルがすごく高かったのです。

それが昨年BSテレビで花祭りの特集が組まれ、それを観てすっかり感動してしまってどうしても行きたい!と調べたところ「バス」がある!!!…と行ける気になってさらに調べると時刻表に「※土曜日・日曜日、祝祭日、年末年始は運休」の文字!

花祭りは奥三河で15箇所行われているのですが、そのほぼ全てといっていい開催日がその「土日、年始」にあたるのです。交通機関を利用する人間にとって、一番の障壁はまさにそこなのです。
最終手段として「東栄タクシー」さんに問い合わせをしたところ、その日稼働しているのは一台のみ。要予約ということでした。最寄駅「東栄駅」から上黒川花祭り会場までは20km以上の距離。けっこうな料金になってしまうため、ヒッチハイクしようか…いや、歩いていこうか!とも真剣に考えました。
昔ある民俗学者は山道を歩き苦労して到着した先で見た花祭りに感動を覚えたと言います。それに習おうか…とも。ところがここでタクシー会社からうれしい提案が。
「同じ時刻に先約で上黒川に行かれる方がおられるので、その方さえOKなら同乗でよろしいでしょうか?」と。
いやもう!願ったり叶ったりです。お知り合いもできるし、お金も節約できる!!
こりゃもう!迷いなく行くっきゃない!!とタクシーを予約しました。

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東栄駅までは自分の家から片道約6時間半。到着するとJR飯田線「東栄駅」の独得の外観が迎え入れてくれました。これ何を模しているか分かりますか?
たぶんお分かりになると思いますが「鬼」です。構内には「ちゃちゃカフェ」という喫茶店があるのですが、こちらのオーナーさんは「花祭り」のお手伝いをするようになって愛知県からIターンで引っ越しされてきたそうです。残念ながらこの日はお休みでしたが、ひょっとして花祭りに行かれているのかな?

駅を出るとさっそくタクシーが扉を開けて待っていてくれました。まだ中に乗っているのは運転手さんひとり。どうやら僕のほうが同乗させていただく方より先に来ちゃったようで「もう一組の方、まだなんですね~」と軽く話しかけると「キャンセルなさいまして」との返事!!ガビーン!!財布の中の樋口一葉さんや、野口英世さんたちが旅に出る準備を始めました。
「へ~!そうなんですね」と平静を装いつつ、すげーイタタタ。でも仕方ないので、もう開き直ってその分楽しもうと決めました。

ぐんぐん上がっていくメーターを見ないようにしながら、タクシーの運ちゃんとの会話を楽しみつつ、花祭りの会場である「花宿」に到着したのが13時過ぎ。

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上黒川花祭りは熊野神社境内にある花宿で行われます。鳥居両側には見事な桜があり、春の美しい姿が容易に想像できます。
花宿の前では地元の方二人ほどの方が作業をされているだけで、訪問者の姿もまだありませんでした。

「ここが花祭りの会場でよろしいですか?」などと地元の方とお話しを楽しみつつ、さっそく花宿を見学させていただく…ドキドキ。
実は今回の花祭り、コンディション的にすでに疲れてしまっていた状態で、楽しめるだろうか…という不安が心を大きく占めていました。楽しみにしすぎて、「楽しみたい」が「楽しまなきゃ」になってしまっていたところもあります。行きたすぎる祭りに行くと時々なってしまいます。

そんな空回りした気持ちや不安は、花宿に入った瞬間に消し飛んでしまいました。

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「美しい」のひとこと。夜を徹して人々が舞い続ける舞庭(まいどの)。窓からの光が筋をつくり、静かだけれども張り詰めているわけではない、大らかな空間にパチパチと時より炭がはじめる音がします。
これから神々を迎え入れようとする場が持つ神聖さなのか、何代も前から舞続けてきた先人たちの思いがしみ込んでいるのか、そこにある特別ななにかを感じ、本当に感動しました。これを観れただけでここに来てよかった。そう思いました。思わず、地面に手をつき頭を垂れました。

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頭上には、切り草というのでしょうか、色鮮やかな飾り等がつるされ舞庭を彩っております。

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あまり詳しくは調べていないので知らないのですが、こちらは「添え花」と言われるもので、無病息災など祈願をこめて奉納されます。祭りが終わったあとは、奉納したそれぞれのご家庭に一年間飾られるとのこと。

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ひときわ大きな飾りは「びゃっけ」でいいのでしょうか。どういう意味合いがあるのかは分かりませんが、四方から赤、青、黄、白かな?の神道と呼ばれる綱状のものと繋がれております。神道は文字通り、神様の通り道とのこと。御方とも聞きました。どれが正しいのかはまだ分からず、また通いながら勉強していきたいと思います。

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こちらは「湯葢」と呼ばれるもので、釜の真上にあって神様が宿るところになります。月と太陽と中央はなにだろう、吊るされております。「びゃっけ」は「白蓋」と書くそうなので、それならこれがびゃっけにも相当しそうな気もしますが、どうなんだろう。湯葢とびゃっけも一本の神通で繋がれております。

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こちらは「ざぜち」と呼ばれる結界。地元の方々が毎回切って作られるもので、二見浦の夫婦岩や、天狗、鬼、鳥居など二十程度の種類があります。

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上座にある太鼓。打ち出される独特の太鼓のリズムと、笛、掛け声によって舞は進められていきます。舞庭の正面は太鼓と反対側になります。

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舞庭の他に目を向けて行きますと、こちらは「宝」と呼ばれ、先ほどの「添え花」と同じように「家内安全」など祈願をこめて奉納されたものになり、花祭りの中、「宝の舞」などで使われることになります。

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ユニークなところでは、コタツがあったりもします。舞庭からは少し離れていますが、コタツに入りながら「花祭り」を楽しむことができる。祭り中においては、世界一贅沢なコタツです。

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こちらは売店。花祭りは夜通し行われますので、お腹がすいたり、飲みたくなったらこちらでゆっくりすることもできます。けっこう豊富なメニューです。

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花宿奥の階段を上がると、熊野神社の御本殿があります。祭りが始まる前に無事開催とお世話になるお詣りをさせていただきます。祭りに行った時にまずはお詣り。これは欠かせません。10時半からこちらで「二丁鉾の舞」とう神事も執り行われているのですが、始発でも昼過ぎ到着な自分には見ることが叶いません。
本殿の右奥には、花まつりを伝えた山岳修験者の方々のお墓もあり、そちらにも手を合わせる。

次に神事が執り行われるのは、15時半の「釜払い・湯立神事」。
それまで時間があるので、地元の方とおしゃべり。こういう祭りが始まる前の空気や時間も好きなので、早めに到着するように心がけております。


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舞庭の奥にある「神部屋(支度部屋)」に安置された鬼の面。
お話しさせていただいている中で、躊躇していたのですが思い切って「見せていただくことできますでしょうか?」とお願いしたら、快く見せてくださいました。「花祭り」では「山鬼」「榊鬼」「朝鬼」の三鬼に、それぞれ「一番子」「二番子」と伴鬼が登場し、これだけの鬼のお面が使われます。
お面は「土用の丑の日」に虫干しされるのだとか。

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左から「朝鬼」「榊鬼」「山鬼」の面となっております。かっこよすぎます。デザインを見ても本当にすばらしい。榊鬼の角の表現などおもしろいし、朝鬼のヒゲの描写なんてとても現代的にすら感じます。どれほど前に作られたものなのでしょう。鬼の役はほぼ世襲で受け継がれているらしく、現在の舞手、その父、祖父、曾祖父、そのご先祖様と世代をこえて被り受け継がれてきた面が目の前にあると思うと、歴史の重厚さ、積み上げられてきた「花祭り」に対する人々の思いが、お面に集約されている気がします。こちらも面を前にして居住まいを正し、手を合わせました。

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見せていただいたこちらのお面の裏側には「文久十一月」という彫り。文久は1861年からの4年間で江戸時代の幕末、徳川家茂の時代です。すばらしい貴重なものを観させていただきました。ありがとうございます。

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こちらには「花祭り」の次第が書かれております。もう消えかかってきておりますが、上下二段に渡るこれだけの次第を一昼夜かけて執り行います。

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こちらも「花祭り」で使われる、鈴、花笠、湯たぶさ等、道具の数々。

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地元の年配の方が昔の写真を持ってきて「一番最初に舞った時の写真なんだよ」と見せてくださいました。

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懐かしい写真の数々にしばし盛り上がる。この頃の舞は足が揃っている等、細かい部分にも長年祭りを支えてこられた方の厳しい目が入りつつ、「この頃は毛がたくさんあってかっこよかった」「オレかって毛があった」話題はなぜか毛の話に(笑)毛の話なら自分も参加できます。
何十年間も花祭りとともに人生を歩んでこられた方々にとって、花祭りはどのような存在なのでしょう。

地元の方々とお話しをさせていただいていると、時間が経つのもあっという間。
「釜払い・湯立神事」の時間が近づいてきました。

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釜に竹筒から水が注がれます。水は天竜川の上流から汲んでこられたもので、清らかな水で釜、舞庭を清めます。

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準備は整いました。静まった舞庭の空気がさらに引き締まったように感じます。
僕にとって初めての「上黒川花祭り」が始まろうとしています。


(その2)へつづく。




Commented by dendoroubik at 2017-01-10 18:53
おっ!はじまりましたね!
窓から射しこむ光を見るだけで
ただならぬものがはじまる気配!
Commented by senbei551 at 2017-01-10 19:02
次回で最終回です(確実にウソ)。
舞いが始まってからは、写真多めで文章少な目になりそうです。
Commented by tora003 at 2017-01-10 20:08 x
奥三河に古より伝承されてきた「花祭り」・・
愛知県在住の祭り好きな私もこの祭り行事は拝見したことがございません。
寒い時期に夜を徹して鬼が舞う奇祭は年寄りには厳しい。
今回はせんべえさん目線で興味深く拝見させていただきます。
Commented by senbei551 at 2017-01-10 20:36
日本をまたにかけるお祭り男toraさんがなにを仰いますか(笑)いつかぜひ、ごいっしょしましょう(^v^)
Commented by すぺいん人 at 2017-01-10 22:59 x
わ~い♥♥♥

美しく素晴らしいお写真の数々に、舞が始まる前から感動してしまいました!
上黒川の舞庭、美しいですね~☆

鬼の面も勢ぞろいしているとすごい迫力☆
お祭りに行かれたらまずお詣り!ですよね♪

上黒川も行きたいけど・・・今年も下黒川だけで5日後に倒れましたw(爆)。
続きも楽しみにしております♪
Commented by senbei551 at 2017-01-11 01:14
舞庭見た時は、ほんと美しすぎてため息がでましたよ!
下黒川の元気な花祭りもいいですしね~~(^o^
すぺいん人さんと上黒川にも行ってみたい。

続き更新がんばります。舞になるとなかなか文章にしにくい(笑)難敵です。

by senbei551 | 2017-01-03 15:32 | ◇奥三河花祭り | Comments(6)

時々写真を撮りにいきます。主に祭りと子ども。自分も供奴として住吉大社で祭りにご奉仕させていただいております。


by senbei551