すでに暗くなった境内には提灯の灯りに浮かび上がる曳山とお囃子の音色。
これから始まる「夕渡り」にむけて、静かな緊張感が広がっているように感じられました。
初めて観る曳山、それだけで気分の高まりを抑えることができず例によってニヤニヤしてしまいました。
実に美しい。動く美術館と言われるのが分かる気がします。
しばらくすると曳山の前に役者たちが集まってきます。初めて観る役者に気分はさらにアップ。
(その1)で紹介した孔雀山「義経千本桜」の佐藤忠信。
それに静御前。
気分は高揚しているものの、どのように夕渡りが行われるのかよくわからないままに役者を伴った行列が歩み始めました。今回は八幡宮の場所だけを調べ、他はあえて調べずに祭りに向かいました。知らないほうが、楽しめることもあります。
役者の足元と服装を照らし出すように提灯がとり囲みます。
昔はもっと暗く、今とはまた違った雰囲気が漂っていたことでしょうね。
曳山自体は秀吉の時代から、子ども歌舞伎は江戸時代から始まったと聞きます。
昔どのような様子であったのか想像して観るのも楽しいものです。
夕渡りでは歩きながら、役者が所々で見得を切ってギャラリーを沸かせてくれます。
だいたい決まっている場所があったり、ギャラリーが多く拍手がたくさん送られたところなので見得を切ってくれるようですが、よく分かっていなかったのでなかなかいい場所で観ることができませんでした。
それでも重なるギャラリーの後ろからなんとか見学。
こちらは萬歳樓「壺阪霊験記」のお花。これまたなかなかの色気です。
同外題。え~らいこっちゃ!えらこっちゃ!と番頭の善六。
商店街が見どころだと聞いたので、四番山の翁山を見送ったあと商店街へと移動。
沿道はどこも行列を見ようと人でいっぱいで移動も容易ではありませんでした。
商店街も人をかきわけ、なんとか人山の薄いところへたどり着く。
…が、さきほど書いたように人が多いところで見得を切ってくれる可能性が高いので、だいぶと先で見得を切られるか、通り過ぎてから…ということが多くなかなかよい距離で観ることができませんでした。
翁山「一谷嫩軍記」の藤の方。
同外題の妻相模。
常盤山「源平布引滝」斎藤実盛。
同外題、瀬尾十郎。
孔雀山「義経千本桜」花四天
商店街の中は明るいため写真も撮りやすいのですが、雰囲気という点ではやはり商店街までに入るまでがよいように思いました。暗くて写真を撮るのは難しいですけれども。
どこで観るのが一番よいか…一回観ただけで知ることは難しいですね。
だからこそ、また来年!という気持ちにもなるのですが。
商店街の中では、うれしい出会いもありました。
今回のお祭り見学で一番ありがたい出来事だったと言えるかも知れません。
なかなか見得切るところを近くで観れないなぁと思いつつ、横にいた地元の方にお祭りのことをいろいろとお伺いしていると、その方が萬歳楼の方で役者さんに「ここで止まったって!」「ここで決めたって!」と声をかけてくださりました。
役者さんも応えてくださってありがとうございます。
おかげで目の前で、いいものを見させていただくことができました。
夕渡りはこれでおしまいとなったのですが、その方が道すがらいろいろとお話をしながらお家まで連れて行ってくださり、お茶をいただき、お祭りでお疲れのところいろいろとお話をお聞かせくださいました。
おまけに自転車を貸してくださり、宿泊先が少し離れた場所にあったので大変助かりました。
ありがとうございます。
時々ですが、こうやって地元の方と祭りを通じて交流を持つことができることがあります。
僕にとっては、祭りを観に行って一番楽しい瞬間だと言えるかも知れません。
そしてこの方と出会えたおかげで次の日にもうれしいことが続きます。